近現代建築【モダニズム建築】散歩 ~帝国ホテル 旧本館(ライト館)~

旧帝国ホテル外観

建築士試験にもよく出題される近現代建築。
インテリアコーディネーター試験にも出題されています。

日本の近現代建築は、災害や劣化によって多くの貴重な歴史的建造物が失われてきましたが、実際に中に入って見学できる建物も残っています。

そのうちの一つ、帝国ホテル 旧本館(ライト館)を見に行ってみませんか。

目次

帝国ホテル 旧本館(ライト館)

1923年(大正2年)完成。
設計は、20世紀を代表する建築家、フランク・ロイド・ライト。ライトが初めて手がけたホテル建築でした。

開業レセプションの当日、関東大震災にみまわれましたが、建物はほとんど被害がありませんでした。

その後、1967年、老朽化のために惜しまれながら解体されましたが、中央玄関部分のみが愛知県にある明治村に寄贈され、1985年(昭和60年)より、展示公開されています。

フランク・ロイド・ライトとは

1867-1959アメリカ生まれの建築家。ル・コルビュジェ、ミース・ファン・デル・ローエと共に、「近代建築の三大巨匠」と呼ばれています。

1893年シカゴで独立。大地に低く水平に広がるプレーリースタイルで、住宅作家としての名声を得ました。

当時は機能性と合理性を求めるもモダニズムが建築界の潮流でしたが、ライトは周囲の自然環境と調和し、豊かな人間性を保証する建築こそが理想であると考え、有機的建築(organic architecture)を提唱しました。

しかし、プライベートでのスキャンダルが続き、設計依頼の激減する不遇の時期を過ごします。

浮世絵コレクターとしても知られるライトは、それまでも浮世絵収集のために何度か来日していました。

1913年、フランク・ロイド・ライトは、帝国ホテル新館の設計のために来日します。それ以後もたびたび訪日し、設計を進めましたが、ライトの完璧主義とこだわりから、大幅な予算オーバーとなってしまいます。

工期が遅れ、経営陣ともたびたび衝突がおこりました。結局、解任され、工事の完成を見ることなく、離日を余儀なくされました。

晩年には、再起をかけて、1937年にカウフマン邸/落水荘(ペンシルベニア州)を完成させ、高い評価を得ます。91歳で亡くなるまでに800以上の設計をてがけ、多くの建物を実現させました。

落水荘

帝国ホテル 旧本館(ライト館)の完成から解体まで

フランク・ロイド・ライトは、浮世絵のコレクターとして、美術骨董商の林愛作と知り合います。渋沢栄一の依頼で帝国ホテル支配人に就任した林愛作は、ライトにホテル新館の設計を依頼します。

そして、東京でライトの設計をサポートしていたのが、遠藤新です。ライトが解任された後は、遠藤新が指揮を執り、帝国ホテルは、1923年に竣工しました。

ライト館の完成

1923年(大正12年)9月1日、落成式が行われた日に、関東大震災が起こりました。周辺の建物は倒壊や火災に見舞われましたが、旧帝国ホテルは、ほとんど被害はなく、大きく注目されました。戦争中の被害も少なく、東京の中心で営業を続けました。

旧本館(ライト館)は、東洋風の屋根や庭、石・煉瓦による装飾性豊かな建築と、ライトの象徴ともいえる幾何学模様の内装・家具が美しく調和していました。

「東洋の宝石」と称され、マリリン・モンローやチャーリー・チャップリンなど、歴史に名を連ねる各国の著名人も宿泊し、大正から昭和にかけ、社交の中心として、また、エンターテインメント文化の発信地にもなりました。

ライト館の取り壊し

しかし、戦後の高度経済成長期に高層化の計画が始まり、取り壊しが決定。フランク・ロイド・ライトがデザインした由緒ある建造物を遺したいと、国内はもちろん海外まで、保存活動が起こりました。

関東大震災では倒壊しませんでしたが、独自の工法の影響で、地盤沈下には悩まされ続けました。老朽化もあり、1967年、惜しまれながら解体されました。

中央玄関部分のみが愛知県の明治村に移築され、昭和60年(1985)より展示公開されています。

ライト館の見どころ

外観は、建物の中心から両翼を広げたような形をしています。左右対称の形はとても特徴的で、堂々とした印象を与えます。

1893年開催されたシカゴ万国博覧会では、平等院鳳凰堂を模した「日本館鳳凰殿」が建設されました。すでにシカゴで建築家としてのキャリアをスタートさせていたライトが、この鳳凰殿を間近に見ていたことは広く知られていて、この鳳凰殿をモチーフに設計したと言われています。

建物の壁には、スクラッチタイルと、彫刻された大谷石、テラコッタなどが使われています。

旧帝国ホテル幾何学模様
(参考画像:博物館明治村HP

大谷石やテラコッタには、多彩な幾何学模様が施され、独特な世界観を作り上げています。また、使われている家具や照明器具、食器のデザインまで、ライト自身が手がけました。建築とインテリアとの調和を重視する、ライトの理念が表れています。

メインロビー中央は、3階までの吹き抜け空間となっています。中央玄関内のすべての空間は、この吹き抜けを囲むように配置されています。

それぞれの空間は、床の高さ、天井の高さが異なっていて、大階段と左右の廻り階段を昇るごとに新しい視界が広がり、人々を楽しませてくれます。

旧帝国ホテル吹き抜け
(参考画像:博物館明治村HP

建物の内外には、様々な装飾が施されています。中でも、左右ラウンジ前の大谷石の壁泉と、吹き抜けの「光の籠柱」、大谷石の柱、食堂前の「孔雀の羽」と呼ばれる大谷石の大きなブラケットは、見る人を圧倒する美しさです。

大空間の中を、上下左右に光が巡り、まわりの彫刻に落ちる美しい陰影が、ロビーで過ごす時間を特別なものにしてくれます。

移築されたのは中央玄関部分のみではあるものの、フランク・ロイド・ライトが残した旧帝国ホテルの空間演出、こだわり抜かれた大谷石とテラコッタタイルの装飾性を、今でも感じることができます。

まとめ

日本には、旧帝国ホテルの他にも、「旧山邑家住宅」「自由学園朝日館」が残されていて、一般公開されています。

また、2023年にライト館開業100年を迎える帝国ホテル内には、ライト館当時の壁画やテラコッタを残したオールドインペリアルバーがあり、今でもライトの面影を感じられます。

ライトの建築が残されているのは、本国アメリカと日本だけなので、実際に見学できるのは、とても貴重な体験です。
ぜひ本物を見に行って、ライトの建築を感じてください。

【博物館明治村】
帝国ホテル中央玄関 | 博物館明治村 (https://www.meijimura.com)

【自由学園明日館】
重要文化財 自由学園明日館 (https://jiyu.jp)
【ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)】
ヨドコウ迎賓館 (https://www.yodoko-geihinkan.jp)

【帝国ホテル オールドインペリアルバー]
オールドインペリアルバー | 帝国ホテル 東京 | 銀座・日比谷・有楽町エリア (https://www.imperialhotel.co.jp/j/)

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